ART KIDS アートキッズ?

「アーティストが子供にアートを指導する」形式の継続ワークショップを杉並区にある桃井第四小学校で行っています。これらのワークショップは月一回開催され、10年以上に渡って継続されてきました。「創造性そのものを促進し、参加者が自らの新たな表現を生み出すこと」を一貫して目指しながら、指導アーティストが各回ごとに入れ替わることによって様々なテーマのワークショップを行ってきました。2010年よりイギリス出身のアーティスト、ジェイミ・ハンフリーズにより主に運営され、年三回程のゲストアーティストを交えたワークショップが継続されています。




講師コメント
ジェイミー・ハンフリーズ

 「描く行為を通しての表現、身体と空間の関係性、個人と集団の意識」といった大きなテーマの中で、様々なドローイング・造形方法を通して、参加児童が自ら想像を探索することを目指しています。
 ここでまとめたワークショップは、私自身が強い関心を抱いている手法「ドローイング」を中心にしています。それは芸術手法として原点的且つすぐに目に見えることが、参加児童の感性に適しているからです。描く行為を通して、体を意識し、自分なりの表現を探す場を与え、子どもたちの創造力や描く喜びを育てる助けになればと思っています。
 「場」の提供にあたり気をつけていることは、個人のアクティビティと、集団で展開するアクティビティを交互になるよう制作を行うことです。他者からインスピレーションを得ながらより強く個人と集団の意識を高めることを狙っています。



チョークラインプロジェクト
2011.11

 「チョークライン・プロジェクト」は、野外アート展「トロールの森2011」の出品作品であり、桃井第四小学校の児童とのコラボレーションビデオ作品である。校庭で行われる全員参加の航空写真という、 多くの日本の小学校で見られる開校記念写真からインスピレーションを得て、児童が校庭で大規模ドローイングを行った。その多くの記念写真で見られる、児童が立っている位置によって校章や記念数等が描かれているという決まった形ではなく、斬新なビデオ作品を参加児童で作り上げることがこのプロジェクトの狙いであった。
 児童が石灰マーカーによるドローイングを行い、学校の屋上から、描く線を撮影した様子をビデオ作品にまとめたものだ。そして、音楽家である池田哲氏と児童のワークショップを基に作られたサウンドトラックを加えた。サウンドトラックには、子供がピアニカを弾き、録音した音が作曲の基となっている。



ドットを繋いでみよう
2010.7

 色墨のドットを繋ぐという単純なドローイングのきっかけを通して、身体と空間を探索するワークショップ。開催する前に、ピペットで落とした色墨のドットの付いた5平米程の白い紙を部屋の床に用意した。
 始めに、ミクロの世界に入るように、好きな場所に座った参加者が、身の回りにあるごく小さなドットを探し、自分で持ってきた鉛筆や細かい色ペンで繋いでみる。次に、マクロの世界を考えるように、テープで長い棒に色ペンを付けて、ゆっくりと歩きながら見えるドットを繋いでみる。描かれた線を避けながら描き続ける。最後に、描かれた線と繋いだドットが何を象徴するか、何に見えるかを皆で考え、自由に絵を描いた。



色々な物を繋いでみよう
2012.9

 コラージュとドローイングの手法を交えて展開したワークショップ。ウォーミングアップとして、様々な雑誌を観察し、線的なイメージを切り抜いて、一枚の紙にコラージュして一つの線を表してみる。次に、ローラーとアクリル・ペンキを使う。一枚のA3の紙に、一つの縁から別の縁まで太い線を自由に描く。空間を広く使って移動しながら、他人の描いた線と自由に繋いでみる。
 ワークショップの中心の活動は、新たな地図を作るという試みだった。まず、考えずにキツネ色の紙を様々な形に切り、断片を使って空間全体に広げた白い紙に自由に貼付けていく。最後に、島となったキツネ色の部分を色ペンで繋いでみる。



洞窟に入ってみよう
2010.10

 洞窟の様な不思議な空間に入って、壁に存在している皺や汚れを観察し、創造したイメージをケーブ・ペィンティングのように描くワークショップ。事前に、古い壁紙を縫い合わせて洞窟のような10m平米の空間を用意した。視覚的なインパクトがあるように、紙の壁に照明を照らす等の工夫も加えた。
 参加子供が空間に入る前に、洞窟の内側を想像させながら、それぞれが一枚の紙に洞窟を描いてみた。実際中に入って、壁を観察し、アクリルペンキを使って自由に洞窟絵画を描いた。手の届かない場所に描けるようにドローイングの道具も用意した。最後に、描かれた絵画を観察し、感想を共有した。