高島亮三は日本を拠点とする美術家です。 現代の日本では、主導者の「勇ましさ」を是とし、その中身を吟味せずひたすらその「勇ましさ」に追随する閉塞した空気が蔓延しています。 そのような時代の動向の中、高島はここ数年、ジョージ・オーウェルの小説「1984年」に登場する全体主義国家の掲げるスローガン、「WER IS PEACE. FREEDOM IS SLAVERY. IGNORANCE IS STRENGTH.」(戦争は平和なり。 自由は隷属なり。 無知は力なり。)をテーマにした作品を制作してきました。 本展はそれらの近作をまとめたものであり、展覧会名の「1894+36」は、その「1984年」の世界観から36年後を想定した、極々近い未来の日本をイメージしています。 個人レベルで国家の有様といった壮大な問題を考えたところで、必ずしも大した答えが導き出せる訳でもなく、また、その答え自体に完全な正誤があるわけでもありません。 しかしながら私たちは自分自身に、そして他者へと自分たちのあるべき立ち位置を常に問い続けなくてはならない事を高島作品は示唆しています。 すぐ目の前の未来を「1984+36」年ではなく、「2020」年として迎えるために、本展がその一助になる事を願って止みません。